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TW2【シルバーレイン】の自由なる鷹(水練忍者×ブロッケン)こと、甲鬼・傲廉の不定期手記
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暑い日はほぼ毎回『夏日』近辺まで行き、寒くなる日は一気に寒くなっていたこの夏。

来たばかり、という状況もあって里に帰るのを今回は止めておいた俺は、
下宿先の唯一の涼である『ラクトアイス』を買って部屋に戻った。

…そこにいたのは…

「おや、お帰り。久しぶりですね。」
「…なんでここにいるんだよ、兄者。」

忍びとして先に里から巣立ち、忙しく闇を飛び回っているはずの兄者だった。

 



 

「…食う?」

差し出したソーダアイスを、にっこりとした笑顔で兄者は受け取る。

「ありがとう。…しかし、扇風機もないんですか?」
「わざと買ってねぇの。流石に今日は暑いからアイス買ってきたけど。」
「暑さ我慢するのは鍛錬になるんでしょうかね。」
「いや、クーラーとか扇風機使ってるとそればっか使っちまって、水練ついでに涼むって考え忘れがちに。」
「……水練を涼取りに利用してるんですか。」
「いいじゃん、一石二鳥で。…ってスルーされるとこだった。」

この暑さで平然としている兄者に今更ながらの尊敬と畏怖を覚えつつ、
シャクシャクとアイスを食べながら他愛無い話になりかけて、俺ははたと思い出す。

「どうしたんですか?」
「…いや、だから『なんでここにいるんだ?』って話。」
「何って、傲廉に会いに来たんですよ。」

すらっと言い放つ兄者に、俺はちょっと項垂れる。

「…それだけ?」
「ええ。 里のほうに久しぶりに顔を出したら、あなたが銀誓館に入ったうえに今回里帰りしないと聞いたものでして。」
「……いや、どうせ正月は里帰りしなきゃならないんですが。」
「心配な弟の様子を見るのに、そんなに待たなきゃならないんですか?」

…さっき最初に見たときから思ってたことだけど、やっぱり…

「…兄者、変わってねぇ。」
「そうですか?」
「半分しか血ぃ繋がってないのに、俺に過保護すぎやしねぇ?」
「何言ってるんです、師も同じでしょう。」
「…いや、確かにそうなんだけど…」


俺と兄者は母親が違う。

兄者の母親は里に縁のある良家の娘で、物腰が柔らかいうえに芯が強い、絵に描いたような『大和撫子』。
俺の母親は目つきの強い元レディース(女暴走族)の頭で、外に仕事に出てた父親に偶然会って一目ぼれした忍者、侍好き。

二人とももういないけど、兄者は俺の母親も『母』としてちゃんと接していた。俺も話や写真でしか知らないけど、兄者の母親に好感を持っている。
そして二人とも、自分の母親を慕う意味で好きでいる。


「大体、修行途中って言ったって『能力者』として認めてもらった上で里から出されたんですが、俺。」
「…まぁ、どうあってもあなたは私の『弟』ですから。」
「…だからそれが過保護だっての。」
「…里長の修行中はよく泣いていたんですけれどね…。」
「Σんなちっちゃい頃の話持ち出すなよ! 一応これでもゴーストは倒してんだぜ!?」
「一人でですか?」
「…仲間で;」

目を背けてそう告げた俺の頭を、兄者はポンポンッと軽く叩く。

「…やっぱ子ども扱い~;」

恨めしそうに頭を抑えつつ兄者を見ると、兄者はくすくすと笑っていた。

「あなたはそれでいいんですよ。私の様に孤独で闇の中にいるより、仲間と…友と一緒に戦う方があなたに合っている。」
「…兄者…。」
「ただ、これだけは。『敵』に情けと容赦は必要ありませんよ。」
「…わかってるよ。だから、より冷静になれるように『戦闘中』は兄者に近くなれる様に癖までつけたんだぜ。」
「…複雑ですね、それも。」


意識的にやると長続きしなくて、ゴースト戦になると長続きする『口調変化』。
里での修練中に編み出した、『冷徹』になる方法…。
敵を冷静に殺せる兄者を真似ることは、既に俺にとって『癖』の領域。
だから、『戦う』時は意識せずに出来る。


「あなたは私と逆に走って欲しかったんですけれどね。」
「…俺は、戦闘中ぐらいは兄者みたいになりたい。」

その呟きを聞いて、兄者はきょとんとしたあとまたくすくすと笑った。

「私が過保護なら、あなたは『兄離れ』が出来てないようですね。」
「…うるせえ。」

そう言いあって、今度はお互いくすくす笑った。


次の日に仕事があるといって、兄者はその後すぐにどこかに行ってしまった。

「…怪我してないといいけどなぁ…。『これ』、多分返り血なんだろうけど。」

ほのぼのとした空間に微かに漂い、今もほんの少しだけ部屋に残った『血の匂い』に、
今更ながら兄者のいる『場所』と仕事の『過酷さ』を思う。

人を屠る兄
死人を屠る俺


…願わくば、兄者が返り討ちに合うことがないよう、そしていつか俺が兄者を『屠る』ことにならないように…

 

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プロフィール
HN:
甲鬼 傲廉
性別:
男性
職業:
水練忍者×ブロッケン
自己紹介:
中学の頃学園祭直前に銀誓館学園に転校して来た少年。
鷹のように鋭い眼差しを持ちながら、暢気で明るい雰囲気、そして『自由』と『誇り』を持つ
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